感想『舞台 仮面ライダー斬月 -鎧武外伝-』見事な再構成と呉島貴虎の物語

3/31に大千秋楽を迎えた『舞台 仮面ライダー斬月 -鎧武外伝-』、私もライブビューイングで観劇してきました。せっかく京都在住なので生で観たかったとは思いますが素晴らしい作品でした。というわけで、感想を残しておこうと思います。
以下、今後DVDやBlu-rayで観る予定の方はネタバレ注意です。

 

 

 

 

 

この作品を簡単にまとめると「『鎧武』本編の再構成+呉島貴虎の前日譚&後日談」といったところ。
『鎧武』本編の再構成部分として、地下世界でのチーム同士の抗争が描かれる。チームのリーダーは紘汰・戒斗・城乃内を、傭兵は凰蓮をそれぞれかなり意識したキャラクターになっており、(紘汰にあたるアイム役の萩谷慧悟は声が佐野岳そっくり!)変身するアーマードライダーも本編のそれに対応する。今回は舞台ということもあってか、抗争の内容ははっきりと殺し合いという本編よりも過激になってはいるが、おおよその展開は本編をなぞるような形のダイジェスト版に近い。さらに、抗争しているのは「子供」で支配層である「大人」がそれを見ているという子供対大人という構造は舞台版にも引き継がれている。しかし、この「子供」に向き合う貴虎の目線は本編後のものであり、「本編後の貴虎が見る『鎧武』」とも言え、貴虎の変化がみてとれるというだけでもグッとくるものがある。本編序盤のビートライダーズを「クズ」と言い捨てる貴虎とは目の向け方が違う、それを描いてくれただけでも観に来た甲斐があったと思わせてくれる。

「呉島貴虎の前日譚&後日談」としては、貴虎の過去の親友・鎮宮雅仁との関係が描かれる。雅仁は沢芽市に来る前の貴虎と思想を共有した協力者でありながら、実験の失敗に伴いオーバーロードになった存在である。雅仁との戦いを通して貴虎は過去と向き合い未来へ進み、アイム達に希望を託して去っていく。この選択は本編の経験がある貴虎であるからこそのものである。そして何よりカチドキロックシードをアイムに憑依した紘汰から入手するというのがアツい。本編の「変身だよ。」を踏まえた2人のやり取りは涙無しには観れない。紘汰の「変身できたんだな…」という言葉を受けて雅仁に立ち向かう貴虎の姿が見れる。地球を去った紘汰が残したものが受け継がれていると改めて描出してくれたのだ。こんなに嬉しいことがあるだろうか。

 

オマージュ盛りだくさんの演出で本編を追体験しながら、貴虎の「変身」を描いた本作は『鎧武』という作品の続編として、貴虎の物語として、この上なく完成されている。加えて、舞台ならではの生身アクションの迫力、プロジェクションマッピングを駆使した変身演出などなど平成の終わりに『仮面ライダー』の新しい可能性を提示してくれた作品である。